投稿者:  投稿日:2002/09/01(日)23時26分20秒

学校の美少女コンテストなる企画に無理矢理ノミネートさせられた虹野さんだけど
恥ずかしながらもどんな結果になるかちょっとドキドキしていたら
実はそれが裏詩織の陰謀で虹野さんだけ票が一つも無いという大敗を
演出されてしまって体育館での結果発表の場で大恥をかかされた上に
「いくらなんでも可哀想よね、虹野さん。次はこのコンテストで一位になった私の
 権限を使ってあなたのために『足の臭い女コンテスト』でも開いてあげるわよ」
と白々しく裏詩織に嘲笑を浴びてさらに大恥をかく姿は萌えだな  (*´Д`)y─┛~~~


二人は臭い足と共に

というわけで今日は裏詩織の開催した
『足の臭い女コンテスト』の投票結果発表の日だ
虹野さんも結果は分かっていながらも一応学校の行事である限り
サボるのは性格上出来ないので浮かばない表情のまま体育館へ向かい
結果発表を待つことになったのだけどその発表で呆然とすることになったのは
虹野さんだけじゃなかった

「な、何で!何であたしが・・・!!」
投票結果を表記してある紙を見て
思わず椅子から立ち上がって叫んだ彼女の名前は『清川望
水泳部に所属していてその運動神経が結構有名らしい
その清川さんが叫んだのも無理はないかもしれないな
何せ暗黙の了解で虹野さんがダントツトップの出来レースかと誰もが思っていたのが
虹野さんと清川さんが全投票の9割以上を占める同票だったのだから

「あたしが・・・あたしが・・・!嘘だ!そんなの嘘だ!」
発表直後に突然向けられる自分への嘲笑の視線に混乱した清川さんが
訳も分からずに叫ぶばかりで余計に自分への視線を増やしているのを
嘲笑の視線の辛さをよく知っている虹野さんが心配そうに見つめている

「さすがにみんな良く知っているわ。ね、清川さん。
 あなたがどんなに隠しているつもりでもみんなお見通しのようよ。
 もっとも、あなたの足の臭さは嫌でもみんな気付いちゃうのかしら?」
混乱する清川さんを嘲笑うかのように壇上から強烈な嫌味を言う詩織が
巻き起こる嘲笑に拳を震わせる清川さんと
今は自分よりも清川さんの方が気になっている虹野さんを壇上に呼び上げる
そしてこのコンテストに二人の一位はいらないと『校内一足の臭い女』の座を賭けて
二人で決着戦を行わせることを発表した

「もちろん虹野さんも清川さんも本心はそんな一位にはなりたくないでしょうね。
 だから二人が頑張れば結果次第では同票一位を認めてあげてもいいわ」
その決着戦とはお互いの足の臭いを嗅ぎ合って決着をつけるという
真剣に争うにはかなり恥ずかしい形式でそのルールは
・順番で相手の素足を鼻にあて深呼吸をギブアップするまで繰り返し
 深呼吸をしている相手をより少ない回数でギブアップさせた方が一位となる
・ただし10回繰り返したら順番は終了で二人とも10回耐えた場合は一位無しとする
・ギブアップまでの深呼吸の回数が同数の場合は判定で決着
・深呼吸のテンポが止まり過ぎてもギブアップと見なし一回の深呼吸も短すぎてはいけない
 また本人にその意思が無くても体が過度の拒否反応を示した場合はギブアップと見なす
・以上全ての判定は裏詩織が判定するものとする

「ちょっと複雑かもしれないけど
 あなた達も少し考えれば自分がどうすれば良いかぐらい分かるわよね」
ルールを説明してから詩織は今回はひとまずこの場はお開きにして
翌日に改めて決着の時間を設けると言い残してスタスタと去っていくと
それに続いて詩織の下っ端が後を追いそして他の生徒達もゾロゾロと
体育館から出ていく中で虹野さんと清川さんだけが壇上で立ちつくしていた

まずは良い演出が出来たとばかりに悠々と帰る裏詩織に取り巻きの一人が
まさか自分が一位になるために一生懸命相手の足の臭いを嗅ぐなんて事はないと進言すると
詩織は馬鹿な話ねと鼻で笑ってからその問いに答える
「あの二人は真剣に臭いを嗅ぎ合うわ。それしか道がないのだから。フフフ・・・」

虹野さんと清川さんにとってこの決着戦で勝っても負けても良いことは一つもない
勝てば自分が屈辱的な『校内一足の臭い女』となってしまうし
負ければ相手をその屈辱の座に追い込むという罪悪感に囚われてしまうからだ

「ごめんなさい、清川さん。あなたまで巻き込んじゃって・・・」
「はは、気にしなくていいよ。正直、あたしの足が臭いのは事実だしさ」
虹野さんも清川さんも相手の足の臭さはどれぐらいかは分からないけど
自分の足の臭さだけはハッキリと自覚していたからこんな状況になっても
ギスギスすることは無くお互いの心の傷をかばい合いながら話は進み
二人にとってこの決着戦での取るべき行動はただ一つだという結論にたどり着いた

「変な言い方になっちゃうけどお互いに根性で頑張りましょう、清川さん!」
「ああ。もうあたし達に残された道はそれしかないようだしな」
どちらかが一位を免れるチャンスよりも二人で協力しあって足の臭いに耐え
二人で一位を回避するもっとも困難な道を選ぶ清々しい決断も裏詩織にとっては
それこそ侮蔑の対象でしかなかったようだ

(絶対二人は深呼吸を耐え抜く道を選ぶ。でもそれは相手に屈辱を擦り付けることよりも
 辛い事なのよ・・・。自分の足の臭さを分かっていながら無駄な努力を選ぶなんて・・・)
全てが自分のシナリオ通りに行くことを確信している裏詩織は取り巻きの誰に言うでもなく
「ほんと、馬鹿って救われないわよね!」と思わず本音を口に出していた
その声の冷たさと裏詩織の体から発生する黒い光気に
取り巻きの誰もが悪寒で思わず体を震わせずにはいられなかった


数日後のある日虹野さんと清川さんだけは特別に午前中の授業は全て体育として
ランニングだけを延々とさせられていた
水分補給は自由だったがシューズは素足で履き対決の時が来るまで脱ぐことは
いっさい許されないという拘束がある
自分の計画のために学校さえも自由に動かしてしまえる裏詩織の力に
改めて恐れを感じている二人はただ黙々とランニングをしてその時がくるのを待ち
昼休みになって食事を取るために校舎に戻る時には二人とも丹念に体の汗を拭いて
せめて足以外の体臭を少しでも抑えようとしていたようだ

そして昼休みが終わろうとしている頃に
校内放送で全校生徒が体育館に集まるように促され虹野さんと清川さんが
校内一足の臭い女の座を賭けて争う決着戦がいよいよ始まることになり
虹野さんと清川さんと裏詩織が壇上に上がって火花を散らす

「あなた達に抵抗するだけの余地を残してあげたことを感謝してほしいわ。
 私の力を持ってすれば世界中の人にあなた達の足は臭いって言わせることも出来るのよ」
結局何をしても最後には自分が勝つのだという勝ち誇った表情でそう言い放つ裏詩織を
黙って見つめ返す清川さんと虹野さんの表情にはこんな事に屈したりはしないという
強い気持ちがしっかりと存在していた

決着戦はまず清川さんの足を虹野さんが嗅いでから
その後に虹野さんの足を清川さんが嗅ぐ順番になり
先に嗅がれる側の清川さんは用意された椅子に腰掛けるのだけど
校舎内でも履きっぱなしだったシューズは自分では脱がない
嗅ぐ側が心の準備が完了した合図として脱がせるもらうためだ

「いいかしら?その清川さんの臭ーいシューズを脱がせたらもう後戻りは出来ないわよ」
裏詩織の言葉に舌打ちをしながら睨み付ける清川さんだけど
本音では自覚している自分の足の臭いを虹野さんに嗅がせるのは正直悪いと思っている
「大丈夫。清川さんの足は臭くなんかないわよ」
動じないようにしようと思っても自分の足の臭さに卑屈になっているせいで
裏詩織の挑発に心を乱してしまう清川さんだったけど
虹野さんの一言で何か救われた気になっていた
臭い汚いと言われ恥をかかされ続けながらも自分の臭さを隠そうともせず
元気に生きている虹野さんの姿は臭さを隠すことに神経を使っている清川さんにとって
励みになっているのかもしれないな

「まあいいわ。さっさと始めなさい」
投げやりな詩織の言葉を区切りにいよいよ虹野さんが清川さんのシューズに手をかけ
片方ずつ順番に脱がしていくのだけどまず右足のシューズを脱がせた時点で漂ってくる
清川さんの蒸れた足の臭いにはさすがに驚きを隠せなかったようだ
虹野さんが臭いとは思わないようにしても清川さんの足は遠慮なく酸っぱい臭いを放ち
左足のシューズを脱がせる手が思わず止まったのを見て裏詩織がニヤリと笑う

(いけない!まだ何もしてないのに怯んだらいけないわ。根性よ、根性!)
清川さんに悲しい思いをさせたらいけないと素早く左足のシューズも脱がして
剥き出しになった酸っぱく蒸れる両足を自分の鼻の前に抱え上げ
おもむろに一回目の深呼吸を始めた虹野さんだけどその瞬間には
あまりの清川さんの足の臭さで体中が痺れてブルブルと震えてしまった

「うぁ、・・・あ、・・・んあ・・・」
「あらぁ?もう休憩?それとも、清川さんの足の臭さがそれだけ凄いって事かしらねぇ?」
まさか虹野さんがいきなりギブアップかという事態に裏詩織の挑発も活発になり
清川さんもこの事態にどうしたらいいのか分からない辛さで顔が歪む
しかしまだ虹野さんは諦めていなかった
「ゴメン!でも、もう大丈夫よ。私、頑張るから!」
さすがに二人で足の臭いを嗅ぎ合う練習などしていなかったから
初めての嗅ぐ臭いで体が思うように動かなかっただけ
自分の心は臭いを耐えることが出来ると清川さんだけでなく自分にも言い聞かせて
虹野さんは再び深呼吸を開始した

大勢の観客が集まっていながらシーンと静まりかえった体育館に
虹野さんの深呼吸する音だけが微かに響く
ランニングで蒸れた清川さんの両足の臭さは想像以上の刺激臭となって
虹野さんの鼻と脳を痛めつけるものの虹野さんは見てる方が耐えられなくなるぐらいの
引きつった表情をしながら何度も深呼吸を繰り返しとうとうあと二回という所まで来ていた
だけどさすがの虹野さんもそろそろ限界なのかもしれない
「う・・・っぐ!ぷ・・・うっぷ!」
胃の中からこみ上げてくる何かを必死に堪えることがもはややっとの状態で
9回目の深呼吸をなかなか始めることが出来ない虹野さんに裏詩織の挑発が続くものの
虹野さんは絶対にギブアップの意思を見せることはしなかった
もう意識が朦朧としていたからそんな余裕すらなかったのかもしれないけど

もちろん清川さんも辛かったけどやっている事がやっている事だけに
無闇に励ますわけにもいかないし止めさせるのもかえって逆効果な上に
お互いに10回深呼吸をしなければどちらかが一位になってしまうのでどうしようもなかった
自分の足の臭さが仲間を追いつめるという嫌すぎる現実が清川さんを悲しませる
「んっ、ぷっ!んんっ、ん!んんん~~~!」
苦しそうにうめきながら必死の表情で9回目の深呼吸を終えた虹野さんの
目からとうとうこぼれ落ちた涙を見て清川さんもまた心の中で泣いていた
(ちくしょう・・・。何であたしの足は臭いんだ。好きで臭くなった訳じゃないのに、
 こんな辛い思いばかりしなくちゃいけないなんてさ・・・)
でもそんな清川さんの心を励ましたのもまた苦闘を続ける虹野さんの姿だった
(そんなあたしの足の臭いをこんなになってまで嗅いでくれてる・・・。
 なんて凄いんだ虹野さんって。・・・あたしも根性を出さないとな!)


清川さんが勇気を取り戻している間に
虹野さんはとうとう根性で深呼吸10回をやり遂げた
涙や鼻水でくしゃくしゃに歪んでしまっているその表情が苦労の跡を物語るけど
それだけの事を頑張ったにも関わらず裏詩織は微動だにせず嫌味を言い放つ
「ふん、何とか10回耐えたようね。でも随分時間がかかったけど」
「・・・でも、耐えたわよ。これで清川さんの足は臭くないって事は証明して見せたわ」
まだ涙と鼻水も拭ってないまま裏詩織に向かって虹野さんが健気に強がると
裏詩織は一瞬呆気にとられながらもそれを一笑する
「あっははははは!そのブッサイクな顔で臭くなかったっていうの?」
裏詩織に笑われ初めて自分の顔の汚れに気がついて赤くなりながら顔を拭う虹野さん
「10回耐えれば一位が無くなるのなら、校内一足の臭い女でもなくなるって事じゃない」
「まあそうね。・・・でも、それは二人とも耐えきることが出来たらの話よ」
虹野さんが耐えても清川さんが耐えられなければ意味がないと鼻で笑う裏詩織の前に
椅子から立ち上がった清川さんが割って入る
「あんたが何を考えてるかは知らないけど・・・あたし達は
 お前みたいな心のねじ曲がった奴の思い通りにはならないからな!」
「そう・・・。その勢いがどこまで続くか見せてもらおうかしらね」
余裕綽々で髪をかき分ける裏詩織を睨み付ける清川さん
今度は清川さんが虹野さんの足の臭いを嗅ぐ番だ

「よ、よーし。・・・嗅ぐぞっ」
清川さんに勝るとも劣らない虹野さんの足の臭いは清川さんの臭いと同じように
シューズを脱がせただけで酸っぱい臭いが周囲に漂い嗅がれる側の虹野さんまでもが
その臭いをうっすらと嗅ぐことになってしまうぐらいの臭さで
清川さんも思わず焦ってしまい緊張で思わず独り言を喋ってしまうけど
それでも一回目の深呼吸を何とか始めることは出来たみたいだ

(・・・まさか本当に虹野さんもあたしと同じぐらい足が臭かっただなんて・・・)
正直虹野さんは裏詩織に不当に苛められているだけで
本当はそんなに臭くないんじゃないかと高をくくっていた清川さんだけど
それが真実以上だったのに初めて驚いている
確かに初めは戸惑ったけど自分の足の臭さを人一倍気にしている清川さんは
よく自分の足を嗅いでは臭さを確かめていたので初めての臭いではなかったのが幸いした

(何とか嗅げそうだ・・・よし!)
初めての時よりもスムーズに2回目の深呼吸を終える
鼻腔に残る酸っぱい刺激臭はより強くなっていくけど自分の足を嗅いでると思えば
何とかなると判断した清川さんは3回4回と一気に深呼吸を繰り返していく
しかし無意識のうちに焦っていたのか深呼吸のペースが早かったことが
実は清川さんの体へのダメージになっていた

「んー・・・・・・・・・!っぷぉ!」
調子よく深呼吸をしていたと思った清川さんが突然咳き込んだ
どうやら突然吐き気を催したみたいだ
「清川さん!」
必死に吐き気を堪える清川さんとそれを慌てる虹野さんを見て裏詩織がニヤリと笑う
どんなに似ていてもやっぱり他人の臭いは体にも意識にも良い影響は与えない
ましてや気持ちで耐えていた虹野さんの足の臭いでは
余計に体の機能をおかしくさせていたに違いないはずだ

喉にこみ上げてくる何かをやっとの思いで胃に戻してから再び深呼吸を始める清川さん
深呼吸に見えないぐらいゆっくりと足の臭いを鼻に吸い込みながら
何とか9回目まで終えたもののこれが最後という所で
体が言うことを聞かなくなってしまった
どうしても自分の意思で臭いを吸い込むことが出来なくなっているようだ

「ほらー、どうしたの?ギブアップかしら?残念ねえ、ここまで頑張ったのに」
(くそう・・・!負けてたまるか・・・あと1回!あと一回なんだ!)
深呼吸を躊躇している間にも鼻のすぐ側にある虹野さんの両足から放たれる臭いは
嫌でも清川さんの鼻に侵入してしまう
(もうやるしかないよ・・・。無理矢理にでも深呼吸しちゃえばいいんだ。やるぞ!)
清川さんの体の異常を察知した虹野さんがギリギリまで我慢してと声をかけようとした時
清川さんはとうとう最後の深呼吸を始めてしまった
そして深呼吸を始めた瞬間清川さんの体が大きくブルブルと震え
突然虹野さんの両足から顔を背け両足を抱えていた手も離し飛び退いてしまった

「・・・!・・・っぷぇ!おっ!おぶぇっ!」
二人が頑張っている間中観客席のひそひそ話ぐらいで後は静まりかえっていた体育館に
ある女子の思わずあげた悲鳴が響きまたある女子の清川を罵るかのような歓声も響く
舞台上では美少女のものとは思えないはしたないうめき声と共に
清川さんの口の中から大量のゲロが吐き出されてしまっていた
凍り付く虹野さん
あれだけの根性も空しい結果になってしまった
虹野さんはとうとう『校内一足の臭い女』になってしまったのだから

「あっははははははは!見た?虹野!?あなたがあれだけ頑張ったのに全部無駄になったわ!
 こいつはあなたのために必死になって足の臭いを嗅いでいた!でも駄目だった!
 自分の臭い足を嗅いでくれたあなたに感謝して、必死になってもなお駄目だったのよ!
 あなたの足の臭さはどんな友情も根性もぶち壊すぐらい救いようがないのよ!」
虹野さんとの友情を果たすべく何が何でも深呼吸を乗り切ろうとした清川さんが
それでも耐えきれなくなってしまうぐらい臭い虹野さんの足という狙い通りの形で
虹野さんの足の臭さを強調することが出来た裏詩織の勝ち誇った笑い声が
全ての気力を失った虹野さんと清川さんの耳に痛いぐらいに突き刺さる
虹野さんは当然辛いけど清川さんだって心の辛さはまったく同じだ
自分だけ守ってもらって虹野さんを守ることが出来なかったのだから

「さあ虹野さん!足の臭い女の一位として、みんなに喜びの声を聞かせてあげなさい!」
悔し涙をこぼしながら嗚咽する清川さんの背中をさすっている虹野さんの腕を取り
無理矢理舞台の前側に立たせる裏詩織
四つん這いの姿で俯いたままの清川さんをチラリと見た虹野さんは意を決して口を開く
「みなさん!私が今回校内一足の臭い女になることが出来ました虹野沙希です!
 こんな名誉ある賞を勝ち取ることが出来てとても嬉しいです。
 これからも私がずっとこの賞を取れるように皆さん応援してください!」
あまりにも意外な言葉に誰もが声を失った
まさか喜びの声が聞けるとは思ってもいなかったから
しかし裏詩織だけは虹野さんの真意を見抜いている
「はぁ?あなたの努力をフイにした清川さんをまず庇うっていうの?
 最後の最後までいい子ぶって・・・馬鹿みたい」
もはや呆れるとしか言いようがないように蔑んだ裏詩織の言葉はあまりにも冷たく
傷心をグッと堪えていた虹野さんの背筋を凍らせる
そしてもう何も言うことはないと裏詩織が舞台を降りると観客の生徒達も
ゾロゾロと教室に戻って行きやがて虹野さんと清川さんの二人きりになった所で
ようやく立ち上がった清川さんと共に嘔吐物を掃除して虹野さんと清川さんも
遅れて教室へと戻っていった
「・・・ごめん。約束、守れなかった・・・」
「気にしないで。私はいつものことだから」
それが教室に戻るまでの間二人にかわされた唯一の会話だった


放課後
一緒に頑張った者同士今日は一緒に帰りましょうと虹野さんは清川さんを捜すけど
下駄箱を見ると既に清川さんは帰ってしまった後だった
しょうがなくとぼとぼと一人で帰る途中で河原の土手でたき火をしている
清川さんを見つけて駆け寄り声をかける虹野さんだけど
たき火の中で燃えている清川さんのシューズを見て驚いてしまった
「ど、どうして燃やしちゃうの!?それ、清川さんがずっと使っていたシューズなのに・・・」
「思い出のシューズか・・・でも、今は最悪の思い出しかこのシューズには残ってないよ」

お気に入りのシューズでいつも日課のランニングをし
学校生活の思い出と共にシューズは使い込まれ黒ずんでいっても
それがまた愛着となって履き続けていたのだけど今の清川さんには
このシューズは自分の臭い足の汗や臭いが染み込んだ恥ずべき存在でしかなくなっていた

「大切なシューズなのに・・・勿体なかったね・・・」
そう言われると清川さんも辛かったけど虹野さんはそれでも今まで通り臭いシューズを
使い続けていそうなので何も反論は出来なかったし
虹野さんの強さを羨ましく感じていた
清川さんは足の臭いだけでなく自分の体臭はとにかくひた隠しにしていたかったし
今はもう自分の体臭を吸ったシャツやシューズさえ辛い物に思えてしょうがなかった
でも虹野さんは違う
臭いシューズもブルマーもどんなにからかわれてもそれを隠したり処分したり
とにかく足掻こうとはしなかった

「ねえ、虹野さんはどうして自分の臭い部分と真正面から向き合えるの?
 みんなに言われても虹野さんはいつも普段通りに振る舞ってる。
 どうして、どうして虹野さんは自分の臭いを受け入れることが出来るの?」
突然切羽詰まったように虹野さんに質問を浴びせかける清川さん
清川さんの勢いに慌てながらも落ち着いて話そうとした虹野さんだけど
フイに目から涙が溢れ出してしまい清川さんをハッとさせる

「うん。私も体が臭いって事は凄く辛いし悲しいよ。
 ・・・でも、みんなに臭いって言われて嫌われてるのに私までその臭いを嫌っちゃったら
 私の体が可哀想だよ・・・私の体が独りぼっちになっちゃうもの。
 みんなに拒否されてる私の体は、私の心が受け入れて
 大切にしてあげなくちゃいけないって思うの・・・」
ポロポロと大粒の涙をこぼしながらも笑顔で語る虹野さんの言葉に清川さんも感極まって
虹野さんに抱き付いて思いっきり泣いた
「きっといつか、私達の心も体も受け入れてくれる人が現れるよ。
 その時まで一生懸命生きましょう。本当の自分を好きになってほしいから・・・」

足も腋も汗までもが汚く臭い虹野さんと清川さんだけど
流した大粒の涙はどんな物よりも透明に澄んでいて綺麗だったよ  (´ー`)y─┛~~~

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